「健康常識テスト」の結果は、どうでしたか?
中には、憤慨している人もいるんじゃないかな。
「朝食を食べたら、健康に悪いっていうの?!」
そんなふうに決めつけられたら、不愉快ですよね。
事実、ボクだって、軽くですが、毎日朝食を食べています。
「テスト」のほとんどは、「○という説もあり、×という説もある。現状では、どちらとも断言できない。」というのが、いちばん適切な答えです。
「朝食」一つをとっても、現状ではいろんな説があって、何が真実かはハッキリしていません。
ところが、一般的に「健康法」の議論になると、きわめて非科学的に、「科学的データ」とやらが吹聴される傾向があります。
過去を、よく思い出してみてください。
これまで、「科学的データで実証された健康法」とやらに、ボクらはさんざん騙されてきたと思いませんか?
たとえば、いまちょうど議論になっているのが、「コレステロール」問題。
これまでずっと、「コレステロールの基準値は120~219」というのが常識で、健康診断の結果用紙にもそう書いてあります。
お医者さんの多くもそう指導してきたし、「科学的な調査の結果だ」と説明されてきました。
260を超えると、「血液がドロドロ」「いずれ、心疾患や脳疾患を引き起こす」「そろそろ薬の治療が必要」と脅されます。
ところが、これを疑問視する専門家も、少なからずいる。
書籍でもいくつか発表されているので、興味のある人は読んでみてください。
図書館のホームページで、「コレステロール」で検索すると、これまでのコレステロールに対する評価を批判する本が見つかります。
ご記憶の方も多いと思いますが、2005/2/20の読売新聞には、『コレステロールやや高めが長生き?』という記事が載りました。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/life/li522001.htm
こういう説明を読むと、「これまでのコレステロール評価を、もう一度検証した方がいいんじゃないか」と思えてきますよね。
このように、健康に関する「説」は、5年10年という長さでみると、評価がかなり変化するものもあります。
同様の例は、「食物繊維(ファイバー)」。
昔は「食べ物のカス」「意味のないモノ」扱いでしたが、いまでは「健康の花形」になってみたり。
そう、かつては軽視されてきた「東洋医学」も、最近は医学的扱いがかなり上がっています。
「民間療法」みたいなのにいたっては、一大ブームを引き起こして消えていったものが、数え切れません。
もう何十年も前の、「紅茶キノコ」や「おしっこ飲み健康法」は、いまでも語られるくらいのブームでした。
若い方のために、「おしっこ飲み」ブームを説明しますね。
信じられないと思いますが(^^;
20年ぐらい前だったか、「自分のおしっこを飲むと、健康増進になる」というのがブームになりました。
ワイドショーで毎日のように取り上げられ・・・
いろいろな「科学的根拠」が示され・・・
「朝一番の濃いヤツが効く」なんて、まことしやかに言われたり・・・
有名人が「私も飲んでます」と自慢げに話してたり・・・
「臭いが消えて、飲みやすくなります」なんていう粉末剤が売られたり・・・
最終的に、だれが判定したのか、「科学的根拠なし」と言われたとたんに、ブームは消えてしまいました。
あんなに「科学的根拠」が叫ばれていたのに、いつの間に「科学的」でなくなってしまったんだろう???
これまでの「健康法」の議論をみていると・・・
「健康」問題には、一人ひとりの「強い主義や思想」みたいなのが結びついているようです。
そして、特徴的な「非科学的」態度が横行し、それが「科学的」というフレコミで登場するケースが、たくさんあります。
その「非科学的態度」というのは、大きく2つあります。
1.出所不明の「科学的データ」とやらが、一人歩きする。
ある「説」の説明が伝わるとき、ちょうど「伝言ゲーム」みたいなことが起きます。
「ホントに効く」→「科学的に証明されている」→「実験で実証された」→「大学で実験して証明された」みたいに。
また、「多くの原因の1つと考えられる」→「それこそが、唯一の原因」みたいに変化することも多い。
「1日2リットルの水飲み健康法」も、みんな「どこかの権威ある組織が、キチンと実験して証明したんだろう」ぐらいに思ってる。
そして、いつの間にか、「真実の健康法」として語られたり。
「みのもんたが言ってた」というだけで、「玉ネギ食えば、血液サラサラ」なんて信じちゃう。
みのもんたが、「ウン○を食ったら、ガンが治った」なんていったら、食べちゃう人もいっぱいいるんじゃないかな(^^;
2.一つの実験データが、一つの理論だけの根拠とはならない。
たとえば、「中学生1万人にアンケートをとって、「朝食を抜く」ということと、その生徒の成績の、相関関係を調べた」とします。
そして、「朝食を抜く生徒は、成績が悪い傾向がある(相関関係がある)」となったとしましょう。
ここまでが「調査に基づくデータ」となります。
こういうデータを聞くと、「朝食を抜くと、脳に栄養がまわらず、活性化しない」という「説」が真理であるように思えてきちゃいます。
しかし、実際には、「その「説」の根拠にもなりうる」ということに過ぎません。
「朝食を抜く家庭は、現在の日本では親の管理監督がいいかげんであるケースが多く、そういう家庭は勉学管理もいいかげんだ」という「説」だって、このデータを「根拠」とすることができちゃいます。
これは「科学基礎論」という分野で勉強することですが・・・
われわれは、「リンゴが落ちるのは、万有引力説の証拠だ」と知っています。
しかし、ニュートン力学とまったく相反するアリストテレス的自然観でも、リンゴが落ちることはちゃんと説明できます。
「科学的なデータがある」というだけでは、その「説」は「真理」にはなりません。
こうした「非科学的態度」こそが、ボクらが「科学的健康法」とやらにだまされ続けた背景なのかなぁ、と思えてきます。
「ブームに乗っかって、楽しみたい」というだけなら、それでもいい。
でも、自分にとって「より正しい健康法」を見つけようと思うなら、「ボクらは、こうした「非科学的態度」に陥りやすい」ということを、知るところから始めないといけないのかもしれません。
現在、「真実の健康法」は、まだ見つかっていません。
あるいは、「真実の健康法」などというものは、存在しないのかもしれない。
いずれにしろ、現在の「健康法」は、ヨガだろうと東洋医学だろうと、「すべて「説」である」という態度で見直すところから出発したらどうでしょうか。
しかし、ボクらは、少なくとも「自分にとって、有効な健康法」を見出していかなくてはならない。
では、それらの「説」から、真実を汲み取るにはどうしたらいいのか。
「情報の洪水」をわたっていく、羅針盤のようなものは、ないのでしょうか。