教材用の童話

10年前に、インストラクターさんに作ってもらった補助テキストを、
改訂しています。
その中で、童話を使うのですが・・・
人の物語を勝手に使うわけにはいかないので、自分で作ってみました。
ちょっと、長くなってしまった。

「法晃くん」→お子さんの名前
「ペロちゃん」→ぬいぐるみの名前
「犬」→ぬいぐるみの種類
「お兄さん」→女の子だったら「お姉さん」

個人的に使いたい、という酔狂なかたは、
上記のように置換してください。
誕生日の、プレゼント絵本になります。
ぬいぐるみといっしょにプレゼントする、とか。

教室などで、勝手に使用しないでね。

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「あたらしい友だち」

朝、法晃くんが目を覚ますと、枕元に絵本がありました。
題名は、「あたらしい友だち」。
「たんじょう日、おめでとう。未来の自分より」
そんなメッセージが、書いてあります。
「なんだろう、ふしぎだな。」

その日は、法晃くんのたんじょう日。
夜、家族みんなで、おいわいです。
「おたんじょう日、おめでとう。」
みんな、ニコニコ。
お母さんが、プレゼントをくれました。

開けてみると、犬のぬいぐるみです。
「かわいいなあ。名前はペロにしよう。」
法晃くんは、それから毎日、ペロとおしゃべりしたり、あそんだり。
大の仲良しになりました。

ねるときはもちろん、ごはんのときも、外あそびのときも。
お母さんと、買い物に行くときも。
法晃くんは、いつもペロといっしょです。
たのしいときも、うれしいときも。
お母さんにしかられて、ちょっぴりかなしいときも。
いつもいつも、ペロといっしょです。

それから何年も、時間がすぎました。
法晃くんは、もう、中学生のお兄さんです。
いつのまにか、ペロはいなくなりました。
法晃くんも、いつのまにか、ペロのことをわすれてしまいました。

ある日、学校でとってもいやなことがありました。
失敗して、クラスのみんなから笑われて。
はずかしくて、くやしくて。
ああ、思い出すのもいやです。
「もう、学校なんか、ぜったいに行かない。」
法晃くんは、クロゼットに閉じこもって、泣いています。

「法晃くん、どうしたの。」
クロゼットの奥のほうから、声がします。
びっくりして、目をこらして見てみると。。。
暗がりの中に、ボロボロのぬいぐるみがいます。
「ペロ、ペロじゃないか!」

法晃くんはペロに、いろんなことを話しました。
ペロがいなくなってからのこと。
そして、今日、学校であったことも。
とってもはずかしくて、とってもかなしくて。
「失敗は、はずかしいことじゃないよ。
法晃くんが失敗から立ち直ったら、とってもかっこいいよ。
だいじょうぶ、がんばって。」
ペロは、そう言ってはげまします。

また、何年も、時間がすぎました。
もう、法晃くんは、おとなです。
おとななのに、なぜか、つくえに古いぬいぐるみが置いてあります。
「ペロとは、長いつきあいだな。
おまえが来たのは、いつだったっけ。」
そんなことを、話しかけています。

「そうだ、むかしの自分に、メッセージをおくろう。」
ペロと出会ったころの自分に、どんなメッセージをおくろうか。
法晃くんは、そんなことを考えています。